軽井沢に「住む」と「別荘を持つ」は別の話
軽井沢は、日本でいちばん「憧れ」で語られる移住先かもしれません。ただ、テレワークや二拠点生活の候補として本気で考えるなら、憧れの前に3つの数字を知っておく必要があります。移住支援金は使えない、冬は北海道の伊達市より寒い、普通のアパートがほぼ市場にない——この3つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長野県の移住支援金 | 軽井沢町は対象外(隣の御代田町・佐久市・小諸市は対象) |
| 東京駅からの新幹線 | 1時間10〜20分/自由席5,490円/通勤定期 月131,430円 |
| 気候(気象庁平年値) | 年平均8.6℃、1月−3.3℃、8月20.8℃、降雪141cm、最深積雪24cm |
| 家賃 | 掲載148件の平均38.8万円(別荘・リゾート物件が大半)。普通のアパートは1K 8万円台で数件 |
| 人口 | 19,909人(2026年8月1日時点)。2000年の16,181人から増え続けている |
| 標高 | 軽井沢駅で約940m |
長野県の移住支援金は、軽井沢町では使えない
長野県には、東京圏などから移住して就業・テレワーク・創業の要件を満たした人に支援金を出す「UIJターン就業・創業移住支援事業」があります。世帯100万円・単身60万円に18歳未満の子ども1人につき100万円が加算され、夫婦と子ども2人なら最大300万円という手厚い制度です。
ただしこの制度は市町村が参加して初めて使える仕組みで、2026年度に実施しているのは県内77市町村のうち69。**軽井沢町はその69に入っていません。**町独自の移住一時金もありません。
一方で、しなの鉄道で軽井沢から2駅の御代田町、新幹線の隣駅・佐久平がある佐久市、小諸市は実施市町村です。「支援金をもらって軽井沢エリアに住む」なら、住民票を置く町をこの3つから選ぶという考え方が現実的です。御代田町は軽井沢と同じ高原気候で、人口も増えています。
なお、県の制度に代わるものとして、軽井沢町では省エネ住宅(県の「信州健康ゼロエネ住宅助成金」の交付を受けた住宅)への上乗せ補助や、太陽光発電設備の補助が案内されています。家を建てる人向けの制度なので、賃貸で始める人には関係ありません。
二拠点にいくらかかるか:新幹線代を先に計算する
軽井沢が二拠点候補になる最大の理由は、東京駅から新幹線で1時間10〜20分という距離です。ただし、その1時間は毎回お金がかかります。
- 普通車自由席:5,490円(片道)
- 普通車指定席:6,020円
- えきねっと「トクだ値14」(14日前までの購入):4,060円
- 通勤定期「FREX」:1か月131,430円(2026年3月改定後)
月に4往復(週末ごと)なら自由席で約4万4千円、トクだ値を使い切れれば約3万2千円。毎日通勤するなら定期で13万円強です。「テレワーク中心で月に数回だけ東京へ」という働き方なら現実的、「週3出社」なら家賃と同じ額が交通費に消えます。二拠点は住居費が2倍になるうえに、この交通費が乗る前提で計画してください。
冬は「北海道の伊達市より寒い」
軽井沢は標高約940mの高原です。夏が涼しい(8月平均20.8℃、東京は26.9℃)のは本当ですが、同じ理屈で冬は本州の平地とは別物になります。
気象庁の平年値(1991〜2020年)で比べると、1月の平均気温は軽井沢が**−3.3℃**。北海道で「雪が少なく温暖」とされる伊達市の−2.9℃より低い数字です。ひと冬の降雪量は141cm、最深積雪の平年値は24cm。豪雪地ではありませんが、路面の凍結は冬の間ずっと続きます。
別荘として使っていた家に住み替える人が最初につまずくのがここです。夏向けに造られた建物は断熱が弱く、暖房費がかさみます。冬に留守にする二拠点利用では、水道管の凍結対策(水抜き)が毎回必要な物件もあります。**候補の家は必ず1月か2月に見に行ってください。**夏に見た家と同じ家とは思えない、というのは軽井沢ではよくある話です。
「普通のアパート」がほぼ市場にない
軽井沢町の賃貸物件をYahoo!不動産で見ると、掲載148件の平均賃料は38.8万円。2LDKの平均が38.7万円、4LDKは94万円台です。これは別荘やリゾートマンションの賃貸が市場の大半を占めているためで、一般的な移住者が想定する「駅から歩けるアパート」は、1K 8.4万円・2K 8.2万円といった価格帯で掲載が一桁件数しかありません(2026年9月時点)。
つまり軽井沢の住まい探しは、①別荘を借りる・買う(高い、冬に弱い)、②数少ない一般賃貸を待つ、③御代田町や佐久平エリアに住んで軽井沢は「通う場所」にする、の三択です。二拠点で「軽井沢に安く借りて週末だけ」は、物件の数の面で最も難しい選択肢だと知っておいてください。
テレワーク環境と暮らし
- 通信・仕事場:別荘地でも光回線が引ける区域は多いですが、物件ごとに要確認です。駅周辺にはコワーキングスペースがあり、夏は企業のワーケーション利用も多い町です
- 買い物:スーパーは町内にあり、日常の買い物で困ることはありません。ただし観光客が年間800万人を超える町なので、夏とゴールデンウィークは道路も店も混みます。住民は観光シーズンの動線を避ける暮らしになります
- 車:冬の凍結路を走る前提でスタッドレスタイヤは必須。駅から離れた別荘地は坂と林道です
- 人口が増え続けている町:2000年の16,181人から2026年には19,909人。移住者が珍しくない分、地域との付き合いは比較的ドライで、濃い人間関係が苦手な人には向いています
まとめ:軽井沢は「支援金なし・寒い・家が少ない」を飲める人の町
軽井沢の二拠点・テレワーク移住は、新幹線1時間強という距離と、夏20℃の涼しさという他にない価値があります。その代わりに、県の移住支援金は使えず、冬は北海道並みに寒く、普通の賃貸はほとんど出てきません。この3点を「それでも」と言える人にとっては、東京の仕事を手放さずに高原で暮らせる数少ない場所です。
支援金を使いたい、家賃を抑えたいなら、同じ高原気候で支援金対象の御代田町、新幹線駅のある佐久市を先に見てください。二拠点生活そのものの費用感は二拠点生活のはじめ方(東京から通えるまち6選)で整理しています。
二拠点は運ぶ荷物が少ないぶん、単身パックや小口便を使うかどうかで業者ごとの料金差が大きくなります。拠点を決めたら、複数社の見積もりを一度に比べておくのが手っ取り早い方法です。